近年、医学・歯学の研究・発展のために自身のご遺体を大学へ提供する「献体」を希望される方が増えてきています。弊社が実施している終活セミナーのアンケートでも、
◆「献体に興味がある。」
◆「自分が亡くなったら献体するつもりでいる。」
などのコメントを、これまでに何件かいただいております。
全国的にも献体の登録者数は年々増加傾向にあるようで、2000年(平成12年)では、約20万人、2022年(令和4年)の最新の調査では、献体登録者は31万人以上にものぼるそうです。(参考:公益財団法人 日本篤志献体協会 ホームページより)
今回の記事では、「亡くなった後、自分の身体が医学の役に立つなら...」と献体に関心のある方、検討している方へ向けて「献体」の仕組みや申込の手順、気を付けるポイントなどを解説していきます。
「献体」とは、亡くなったあと、将来の医学・歯学の研究・発展のためにご自分の身体を大学へ提供する制度のことです。
大学の医学部・歯学部の教育課程には「遺体解剖実習」が必ず組み込まれていて、学生が人体の構造を学ぶための解剖学実習・研修・訓練にこのご遺体が用いられます。また近年では、学生だけでなく、現役の医師が手術技能向上のための訓練にもこのご遺体が用いられます。高度で安全な医療を提供するために、献体されたご遺体を用いた解剖実習はとても重要なこととされています。
献体を希望される場合には、事前に「献体登録」の申込が必要です。登録を申し込む際には、さまざまな条件があります。原則として献体を希望されるご本人が60歳以上であること、親族2名以上の同意が必要であることなどが挙げられます。
(公益財団法人不老会ホームページより※団体によって条件が異なる場合があります。)
また、亡くなったときに、ご親族の方が1人でも反対されると献体ができませんので、ご家族で事前にしっかり話し合いをしましょう。
「献体を希望しているけど、お葬式は普通にできるの?」というご質問をよくいただきますが、葬儀は通常通り行うことができます。ご自身・ご家族が希望されるかたちでお葬式を行ってください。ご葬儀が終わったあと火葬場へは行かず、「献体登録」した大学へと搬送されます。
献体されたご遺体は、大学で適切な処置をされ、一定期間保管されます。そして解剖実習を終えたあと、火葬され、ご遺族へお骨が返されます。成願(じょうがん)※1から、お骨が帰 ってくるまでの期間はだいたい1年?3年です。
その後は、献体していただいた方とそのご家族の方のために大学が毎年、慰霊祭を行っています。
「献体」と同じ読みの言葉で「検体(けんたい)」がありますが、意味が違います。
※1成願/亡くなられた後、ご家族の承諾の上、献体されることを「その方の生前の意思が叶う、報われる」という意味で「成願(じょうがん)」と表現します。
生前に献体の登録をされていても、死亡時の状況により献体ができないという場合があります。
たとえば...
・危険な感染症に罹患されている場合(結核・B型、C型肝炎、梅毒など)
・交通事故など※2でお亡くなりの場合
・死後数日以上の時間が経ってしまっている場合
・臓器提供(ドナー登録)の登録をしている場合
などがあります。
※2 交通事故でもお身体の損傷の程度によっては献体ができることもあります。
(公益財団法人不老会ホームページ「よくあるご質問」より)?
献体をして、実際に解剖を受けたとしても、報酬が特典など発生することは一切ありません。「献体」という制度は、「自分の身体を医学の発展に役立ててほしい」という純粋な志によって成り立っています。
献体を希望する人の中には、「献体すれば、火葬は大学がやってくれる。火葬代が浮くから献体したい」といった動機で登録しようとする人がいるようですが、そういったよこしまな理由での献体は大学にお断りされる可能性が高いです。
先述の通り献体の登録にはご本人の意思だけではなく、ご家族の同意も必要です。もし、献体をしたい、とお考えの方は、ご家族と充分に話し合いをしましょう。双方が献体の精神をよく理解し、納得した上での登録をしていただければと思います。
※参考:公益財団法人日本篤志献体協会ホームページ http://www.kentai.or.jp/what/01whatskentai.html
公益財団法人不老会ホームページ https://furo-kai.or.jp/