
かつての日本の供養のかたちといえば...人が亡くなって火葬したあとは、お墓にお骨を納める。各家庭には先祖代々のお墓があり、子どもや孫がそのお墓を守っていく...という流れが当たり前でした。しかし、近年は核家族化・少子化が進み、
・実家が遠方でお墓の手入れをするのが難しい
・子供がおらず、お墓の管理をする人がいない
など、お墓の将来について不安を抱える家庭が増えてきました。そこで、従来のようなお墓を持たず、故人のお骨を海や山などにお骨を散骨・埋蔵し、自然へ還す供養の方法「自然葬」が注目され始めています。今回の記事では、「自然葬」のひとつで、近年人気を集めている「樹木葬」について解説していきます。
樹木葬とは、墓石の代わりに樹木をシンボルとするお墓のことです。「葬」という漢字が使われていますが、特別なお葬式をするわけではありません。日本で最初に「樹木葬」が行われたのは1999年。岩手県にある知勝院(ちしょういん)というお寺が里山を墓地として利用し、墓石の代わりにお骨の上に花木を植えることで里山の「緑化再生」を目指すものとして始まりました。(日本初の「樹木葬」知勝院 https://chishouin.com/)
近頃、広告でよく見られる樹木葬は、1本の大きなシンボルツリーの周りに小さな墓石が置かれ、庭園風に整備されているものがほとんどです。「里山の再生」を目的とした本来の「樹木葬」とは、かたちは違いますが新しい供養のカタチとして、世の中に浸透しつつあります。
多くの樹木葬では、「跡継ぎ不要」、「管理費不要」、「宗旨・宗派自由」などのメリットを謳っていて、「お墓が遠方で管理が難しい」、「お墓の後継者がいない」などお墓の将来に不安を持つ方からの需要が増えているようです。また、新しい墓石を建てる必要がなく、お骨を埋葬するだけのスペースだけあればよいため、費用が抑えられるという点も大きなメリットです。
2025年の調査では※1新しくお墓を購入した人のうち48.5%の方が「樹木葬」を選択したという結果も出ています。まだ比較的歴史の浅い供養の方法ではありますが、全国各地で樹木葬用霊園の整備が進んでいます。
※1「いいお墓」お墓の消費者全国実態調査(2025年)
http://xn--https-e28ig82e//guide.e-ohaka.com/research/survey_2025/
【公園型】
敷地の中心に一本のシンボルツリーが植えられ、その周りにコンパクトな墓石が並んでいるものです。近年、広告などでよく見る樹木葬はほとんどが、この「公園型・庭園型」と呼ばれるタイプになっています。都市部の霊園や寺院の一角に設置されています。最近では、「ガーデニング型」と呼ばれる、霊園内に石畳やレンガ作りの花壇などを設え、より西洋風になったものも登場しています。公園型の樹木葬は、比較的アクセスがしやすく、整備された庭園のような華やかで明るい雰囲気があります。ただ、このタイプのお骨は骨壺に入れたまま地中に埋葬するので、土へ・自然へ還る「自然葬」という点では、思っていたものと違う...と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
【里山型】
樹木葬発祥の地である知勝院(岩手県)のように里山を墓地として利用し、「お骨が自然へ還る」という本来の樹木葬のかたちであるものを「里山型」と呼びます。お骨は骨壺に入れず、パウダー状にして直接地中に埋蔵されます。お骨の上に花木を植えることで、山の環境保全・緑化再生も兼ねています。骨壺を用いないので、本当の意味で「自然に還る」供養の方法といえます。里山型樹木葬は、広大な土地が必要になるため交通のアクセスが不便な場所にあることが多いです。また、お骨を土に還すことを重視しているので、一旦埋葬したお骨を取り出すことができません。分骨などを希望するのであれば事前によく確認しておきましょう。
◆埋葬方法の違い
1.埋葬方法・費用に関してよく確認しておく
樹木葬を管理するお寺や霊園によって契約の内容が異なります。希望する埋葬方法は行ってもらえるか、その場合の費用はいくらかかるのかなどをよく確認しておきましょう。多くの樹木葬では、年間の管理費不要を謳っていますが、それ以外にかかる費用がないか、聞いておくと安心です。(霊園の維持費、法要料、お墓への刻印など)また、お一人だけなくのちのちご夫婦・家族で使用する予定であれば埋葬手数料が都度かかる場合があります。「樹木葬」=「安い」というイメージだけで決めてしまわないように気を付けましょう。
2. 実際に見学して現地の雰囲気を確認する
チラシやネットの情報をみただけでは現地の雰囲気はわかりません。交通アクセス、霊園の雰囲気を実際に見学してみましょう。きちんと樹木の手入れはされているか、静かで落ち着ける場所であるか、スタッフの対応はどうかなど確認できます。ご自身が受けた印象もですが、ご家族がどう思ったか聞いてみると、より参考になるでしょう。また、ひとつだけの場所に絞るのではなく、いくつかの霊園を見学した上で、どこがより自分の希望に合っているかを比較してみてください。
3. 家族・親族との意見の食い違いなどをなくしておく
年々人気が高まる樹木葬ですが、まだまだ歴史の浅い供養方法です。「樹木葬」といわれてもイメージがわかず、どんなものかご存じない方もご親族の中にはいらっしゃるでしょう。「先祖代々のお墓があるのだから、そのまま継ぐべき」という意見もあるかと思います。契約してしまった後にお墓のことでご親族同士が揉めてしまわないよう、事前に話し合いをしておきましょう。
今回の記事では、樹木葬について解説しました。もともとは里山の緑化再生を目的として始まった供養のかたちでしたが、いま樹木葬は世間的に認知が広がっています。お墓の後継者不足に伴い、これからも樹木葬を希望される方が増えていくかもしれません。
お墓のことで苦労や後悔をしないよう、ご自分や家族が希望に合ったお墓のかたちを選んでいただければと思います。